これまで何回か、本保観光庁長官の更迭問題で書いてきた。
それが、蕎麦屋親父だけの憤慨と理解されてしまうのも残念だし、同じ小樽出身というレベルで理解されるのも悔しい。
ということで、この間の事態を冷静にネット関係の記事を検証しながら、整理してみたい。
英国には、歴史的町並みを安易に破壊されないようにと、町並み・歴史的建造物の動向を監視する市民活動「ウォッチ・ドッグ」という団体があるという。
だったら、私達は干支の虎にかけて「ウォッチ・タイガー」にならん。
参議院選を控えた日本の虎は、牙を磨く。
●観光庁長官人事についての疑義
本保芳明観光庁長官が1月4日付退任、後任に溝畑宏氏(大分トリニータ=株式会社大分フットボール前社長)が就任した。
(参考)
*12月25日 報道発表
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091225/plc0912251057005-n1.htm http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=43412*1月4日 溝畑新長官就任報道
http://www.oita-press.co.jp/localNews/2010_126265465826.htmlこの人事には、経緯、背景において多くの疑問がある。
1 瑕疵がないのになぜ更迭か?
前原大臣は12月25日の記者会見で、本保氏の仕事に「何ら瑕疵があった訳ではございません」と述べているが、それなら何故退任させるのか。
在任1年の前任を敢えて更迭するに値する説得力のある理由を明確にしていない。
ちなみに後任に対しては2年の任期を与えている。
(参考)
*12月25日 前原大臣記者会見
http://www.cao.go.jp/kaiken/0909maehara/2009/1225kaiken.html
*観光庁長官を更迭、溝畑氏を起用=TV News
何故かYouTubeほか動画サイトは全て削除。
http://movie1.search.biglobe.ne.jp/video/watch/48a2807539d324ec 2 たった四日でクビを斬る不自然?
人事手続きが不自然に早すぎる。
12月21日 本保氏に突然の内示(退任通告)、25日 閣議了解、同日報道発表、1月4日本保氏退任、溝畑氏着任。
内示から閣議了解・報道発表まで僅か4日。
しかも1月4日付退任までの間には正月休みが挟まれている。
まさに騒ぎが起きるヒマも与えぬスピード人事で、なぜこれほどの緊急を要したのか。
一方、後任の溝畑氏は、11月20日に大分トリニータの経営失敗の責任をとって辞任表明、その後12月5日に前原大臣が直接(?)長官就任を打診(この日はトリニータのJ1リーグ最終戦)、同12日取締役会で大分トリニータを正式辞任、同14日 引責辞任記者会見、同25日 観光庁次期長官就任報道発表。
本保氏への内示の突然さは14日の溝畑氏の辞任会見を待ったからなのか。
また、14日の辞任会見時点では既に観光庁長官の打診を受けている(5日)ということである。
引責辞任に値するのか、背信の誹りもやむを得ず、大分県民に対して道義的な問題が残るのではないか。
これはこれとして本保長官更迭問題とは別に問題視されて然るべきであろう。
(参考)
*溝畑社長引責辞任
http://www.nishinippon.co.jp/nsp/item/135872
http://blog.livedoor.jp/zeileague/?12282300*前原大臣より打診
http://mainichi.jp/area/oita/news/20091226ddlk44010509000c.html3 長官を代えねばならない政策上の対立があったのか?
大臣と長官の間に、路線対立があったのなら人事はありうる。
が、10年度事業には唐突に長官を変えねばならない特別に新たな政策は存在しない。
来年度予算は全て今年度までの事業の充実・拡大。
言い方を変えれば、これは就任1年の本保長官による更なる事業強化である。
ならば本保長官を1年で退任させ、後任に2年の任期を与えるという人事は理解出来ない。
これは明らかに政策推進上の人事異動ではない。
(参考)
*観光庁平成22年度予算
http://www.mlit.go.jp/common/000055962.pdf4 予算2倍増をとらせて更迭?
前原大臣は11月27日の観光庁事業の事業仕分けに先立ち、急きょ自ら本保長官に「予算4倍増」という予算策定を指示した。
そして、事業仕分け当日に長官自身に説明させて袋だたきに合わせ、しかし、長官は結果として「2倍増」を勝ち取った。
が、大臣は挙げ句の果て的に本保長官を更迭した。
前原大臣にとっては「2倍増」はメリットである。
それは、事業仕分けの中で健闘した本保長官の功績でありこそすれ、少なくとも更迭などありえない。
他方、まるで事業仕分けでの駆け引きを読み込んだ出来レースかのような「事業仕分けのカラクリ」も問題だが、この袋だたきが間接的に「長官の力不足」「官僚切りの必要性」を印象づけ、のちの更迭人事の正当性の主張の伏線としているようなシナリオの存在を窺わせる。
ちなみに前原大臣は4倍増の中身にハコ物が含まれているのを知り「コンクリートから人へ」になっていないと長官を激怒したと巷間伝えられているが、これは本保長官の失策ではなく、観光庁担当の藤本祐二政務官による「政治主導」不足の失態でしかない。
(参考)
http://www.travelvision.jp/modules/news1/article.php?storyid=43047
http://kumanichi.com/news/kyodo/politics/200912/20091222003.shtml
http://news.finance.yahoo.co.jp/detail/20091217-00000114-jijf-bus_all5 人事権の私的乱用!
今回の人事は前原大臣による人事権の私的乱用である。
後任長官の溝畑宏氏は、前原大臣と修学院小学校の同窓生。
大臣に溝畑氏を推挙したといわれる松井孝治内閣官房副長官とは洛星高校の同級生であり、まさに京都仲間同士の「お友達人事」といえる。
前原大臣が民主党党首だった当時、側近に「お友達」ばかり集めて党内の顰蹙をかった。 これが後の「偽メール事件」の土壌となったことは周知のこと。
当時と全く同じ状況。
一部には溝畑氏の抜擢は絶体絶命の苦境に喘ぐお友達の救済との見方もある。
今後の国土交通省や観光庁の運営において、偽メール事件や党首引責辞任のような失態につながることが大いに危ぶまれる。
こうした危険を避けるためにも、人事権の私的濫用は一国の大臣として厳に慎むべきである。
(参考)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/091225/mca0912252119043-n1.htm6 後任の溝畑氏は長官適格者か?
後任の溝畑氏は長官適格者足りうるか疑問である。
もし本保前長官より優れており、向後の我が国の観光を託すに相応しい人材であるなら、今回の長官交代には説得力がある。
が、経歴等客観的な情報によると、少なくとも溝畑氏でなければならないという積極的理由は稀薄で、それどころかネガティブな要素が多すぎる。
(1)
溝畑氏は大分トリニータの経営を瀕死に陥れ引責辞任した人物である。
しかも次年度の売上げを今期に計上するなど粉飾まがいのことまでしていた。
(参考)
http://kakula.jp/?q=pressnews/20091117/34444 少なくとも経営能力について信頼性に足るとはいえない。
前原大臣はこのことについて、「確かに今期は経営が悪化をして、そしてその責任をとられる形でお辞めになられましたけれども、皆様にお配りをした経歴を見て頂きますと(中略)今年の経営責任はとられた面はありますけれども(中略)功績というものは大変大きいのではないか」(大臣会見)と述べている。
経歴には直近の引責辞任は含まれないということか。
また、それは前任を更迭してまで溝畑氏でなければならないという今回の人事の説明にはなっていない。
この論拠薄弱さでは、観光庁長官への栄転によって”お友達”溝畑氏への経営責任の追求をかわさせたと勘ぐられても仕方がない。
更には、大臣は溝畑氏がまさに引責辞任の渦中にある時に長官就任を打診した(12月5日)とのことだが、大臣のあまりの配慮のなさもしかることながら、これを受託した溝畑氏の無責任さは国の観光行政のトップたる資質として極めて不適性である。
(参考)
http://soccer.phew.homeip.net/topics/info.php?id=2(2)
溝畑氏は地元大分においては詐欺師呼ばわりされるほど悪評が渦巻いている。
地元での評価を精査したのか。
それを知った上での抜擢であるなら、その悪評にどう答えるか。
(参考)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/142960 http://awfuljapan.livedoor.biz/archives/51357222.html(3)
溝畑氏は総務省出身であり、天下り廃絶を主張する民主党の人事として矛盾する。
前長官は官僚出身であり、これを代えるなら民主党であれば民間人を起用すべきであろう。
この矛盾をこえて、なぜ敢えて同じ官僚出身の溝畑氏(しかも引責辞任の渦中にある人物)でなければならないのか、その積極的理由を明らかにすべきだ。
(4)
溝畑氏の「功績」であるスポンサーには問題が多すぎる。
前原大臣は12月25日の会見で、溝畑氏の大分トリニータでの功績ついて「全くのゼロの状況からスポンサーを自らかき集めて」「自らトップセールスをしてスポンサーを集めて」と強調して氏の能力を高く評価し、これを長官指命の大きな理由としているように見える。
しかし、そのスポンサー群は軒並み問題企業ばかり。
単なる偶然というには不自然すぎる。
●朝日ソーラー:1997/強引な商法で国民生活センターから社名を公表され業績悪化
(参考)
http://www.kokusen.go.jp/news/data/a_W_NEWS_040.html●ペイントハウス:2009/急成長による増資問題で破綻、阪中彰夫逮捕
(参考)
http://blog.goo.ne.jp/tachibanaya_mohei/e/19709ec26e895472b8c123180eb3ad58●さとうベネック:2006/経営悪化により事実上破綻、企業再生ファンドを入れ更生中
(参考)
http://www.fk-shinbun.co.jp/j/2009/03/post-164.html●トライバルキックス:2008/代表の小室哲哉 詐欺容疑で逮捕、スポンサー料焦げ付き
(参考)
http://sankei.jp.msn.com/sports/soccer/081105/scr0811051446010-n1.htm●フォーリーフ:2009/マルチ商法、特商法違反で経産省より6ヶ月の取引停止命令
(参考)
http://www.47news.jp/CN/200902/CN2009021901000962.html http://www.no-trouble.jp/page?id=1236597660647●オメガプロジェクトHD:2009/横濱豊行会長が証券取引法違反で逮捕。
横濱会長は仕手筋のユニオンHD代表。イ・アイ・イの故高橋治則(1995逮捕)の右腕
(参考)
http://eiga.com/buzz/20091119/7/ http://polestar.0510.main.jp/?eid=817166
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091105/crm0911050050001-n1.htm●マルハン:Jリーグ規定における「自粛スポンサー」(遊技関連企業)の対象企業
(参考)
http://www.jsgoal.jp/official/00089000/00089348.html http://www.sports-times.jp/2009/11/200911181759.html
以上の通り、前原大臣が「全くのゼロの状況からスポンサーを自らかき集めて」「自らトップセールスをしてスポンサーを集めて」と高評価する溝畑氏の「功績」は、いずれも問題の多い企業ばかりである。
(参考)http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20091120/210266/
これらから、溝畑氏に「怪しげな背景・人脈」が勘ぐられても仕方がない。
そこまで行かなくとも、少なくとも、これらの不安定なスポンサー群が今日の大分トリニータの経営危機に及ぼした影響は明らかで、その意味で溝畑氏の経営者としての危機管理能力には著しく問題がある。
敢えて本保長官を更迭してまで起用する能力・適性が溝畑氏にあるのか。
この不審に対して前原大臣には公に対し改めて説明する責任がある。